大判例

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京都地方裁判所 昭和54年(タ)60号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

【判旨】

一<証拠>を総合すると原告と被告は、ともに韓国籍であること、両者は曾てともに桃原電機に勧めていて知り合い、昭和四三年一月一九日に結婚式を挙げ、同四四年四月七日に婚姻届を出したこと、両者の間に長女知未(一九六八年八月二一日生)及び次女弘枝(一九七〇年一月二八日生)の二児が出生したこと、被告は昭和四四年一月頃右桃原電機を退職し、独立して、金沢精器(プレス工業)を経営しはじめたこと、被告は、右経営に失敗して約三、〇〇〇万円の借財をかかえたまま、昭和四五年九月頃、ひそかに長女知未を連れて家出したこと、それから約二週間後に被告から原告の父訴外金永晩に電話があつただけで、その後は今日に至るまで何ら連絡がなく音信不通で、生死が不明であること、被告が韓国に行つた形跡があるので、原告の父の金永晩が韓国の心当りを探したが、被告の居所は判らなかつたこと、原告は現在姉の仕事を手伝つて生計をたて次女弘枝を養育していること、原告及び次女はともに日本国に永住を許可され、現在、肩書住居地に住所を有していることが認められる。

二ところで、原被告は、韓国籍であるからその離婚の裁判管轄は、原則として韓国にあると解せられるが、当事者の住所地を基準として裁判管轄を認めることは、国際生活の円滑と当事者の便益のためにも必要と解され、現在、原告は前記のとおり、当庁管内に住所をもち、被告は昭和四五年九月頃原告のもとを去り、住所は勿論その生死すら不明であるから、このような場合は正義公平の見地から原告の求めに従い、原告の住所地を管轄する当裁判所にその裁判管轄があるものと解され本件のごとき場合に調停前置も相当でないので、このまま判決することとする。

三本件離婚の準拠法は、法例一六条により離婚原因たる事実の発生した時における夫すなわち被告の本国法でありかつ同国渉外私法四条によると反致を認めず、両国民法八四〇条は「夫婦の一方は、次の各号の事由がある場合には、法院に離婚を請求することができる。……五 配偶者の生死が三年以上明らかでないとき……」と規定していて、前記認定の本件の場合はこれに該当しかつ同趣旨の規定であるわが民法七七〇条一項三号にも該当するので被告との離婚を求める原告の本訴請求は理由がある。

四次に親権者について考うるにこれも法例二〇条により父である被告の本国法たる韓国民法によつてこれを定むべきでありかつ同国渉外私法は反致を定めていないので依然として韓国民法によらねばならないことになる。而して韓国民法九〇九条は未成年の子はその家にある父の親権に服従する。父がないとき又は親権を行使することができないときはその家にある母が親権を行使するとあるが父母が離婚するときはその母は前婚姻中に出生した子の親権者になることはできないと規定し、離婚に際し親権者を決定すべき旨を定めたわが民法八一九条二項のような規定がなく、わが民法七六六条に相当する八三七条、八四三条のみがあり離婚に際し当事者が子の養育について協定し当事者間で協定が調わないか、協定ができないときは法院が当事者の請求により養育責任者を定めることができると規定しているに過ぎないことから見ると韓国では母は離婚した場合でも婚姻中に先んだ子の親権者になることはできないと定めていて、非常に不合理といわねばならない。そこで当裁判所は去る昭和五二年三月三一日の当高裁判例のごとく韓国民法は法例三〇条により原告と次女の場合のごとくわが国に在住する韓国人には適用すべきものでなくわが民法八一九条二項により被告の家出以来今日迄次女を養育している原告をその親権者と定めるのが相当と考える。原告は長女の親権者も原告と定めることを求めているが長女は被告が連れて出たまま家出し原告の養育を受けているのでないから長女については韓国民法に委せるのが相当で原告を親権者と定める理由と必要がないので長女についてはこれを定めないこととする。但しわが民法八一九条二項の趣旨からして離婚に際し裁判所が親権者を定めることは当事者の申立の有無にかかわらないことであるから主文で請求棄却の宣言はしない。

(菊地博)

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